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なんかちょっと気まずい空気が流れている気がするのは私だけかな。
高田くんは、細い通路を挟んだ私の隣のイスを引き、腰を下ろした。
「えっと。俺、高田凌。
あいつ……由美とは中学一緒でさ」
よく通る低い声は、すごく印象的で、
少しだけ恥ずかしそうに、こっちを伺う。
「うん。さっきちょっと聞いた」
またちょっと沈黙してしまう。
こういう時に何を話していいのかなんて、わかんない。
もっと話を広げるような話題を……。
一人焦っていると、高田くんは、言う。
「ここのクラス、担任吉岡だよな?」
いきなり先生の名前が出て、ドキっと小さく胸が鳴った。
「うん。
よっちゃん、サッカー部の顧問だもんね……」
「あいつ担任やれてんの?
サッカーのコーチとしてはすごいと思うけど、先生って感じが全然しないから」
先生のこと、思い出すのもまだつらくて……。
だけど、そんな気持ちを誤魔化すように、何事もなく答えた。
「うーん。
生徒にからかわれてる気もするけど、
結構楽しいよ」
「やっぱからかわれてんだ」
高田くんは表情を緩めて笑う。
それから思い出したように、笑った顔のまま言った。
「そういえば、吉岡って、現国の佐村と付き合ってるらしいよ。知ってた?」
「え……」
昨日の傷がまた開いて、ズキンと胸に鋭い痛みが走る。
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