新しい恋

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国語の佐村先生? あんまりよく知らないけど、確か…… お嬢さんっぽい雰囲気の。 だけど、したたかそうで、 男子には、ファンも多いけど、 女の子には、あんまり好かれてないような先生じゃなかったっけ? 「部員がちらっと見たらしいんだけど。 ま、吉岡に聞いても、なんも教えてくんないけどさ……」 「全然知らなかった。そうなんだ……」 昨日の彼女って言うのは、その『佐村先生』のことなんだ。 胸が痛い……。 「吉岡ってサッカーしてるときは、 かっこいいけど、普段ダルそうだよなー」 「それは、確かに」 胸の痛みに気づかれたくなくて、あえて笑って、明るい声を出した。 「高田くんがいうと、友達みたいだね」 「なんか先生って感じが全然しないんだよな。近所のお兄ちゃん的存在かも」 高田くんも笑った。 気づくと教室には私たちともう一組。 クラスでも有名な仲のいいカップルだけになってた。 高田くんは、スっと真顔になってこっちをじっと見つめる。 「あのさ、これからマックでも行かない?」 「あ、マック、昨日行ったんだよね……」 みのりと一緒に行ったのもマックだった。 うちの学校から一番近いファーストフード店はマックで、みんなの溜まり場になってるのは、確かだけど、 「別に2日続けてでもいいんだけど、他のお店の方がいいな。ドーナツ屋さんとか?」 私がニコっと笑うと、高田くんも目を細めて笑う。 「じゃ、そっちに行こう。 俺、荷物とってきてから、玄関で待っとくから」 「うん」 高田くんは、子供のように嬉しそうで、悪い印象は全然ない。 むしろ、どうして私なんだろうって思っちゃうくらい、好印象しかない。 高田くんが教室から出て行って、 私もカバンを持ってゆっくり玄関に向かう。 夕方の空気。 人もまばらの生徒玄関に、スっと立った背の高い影。
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