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高田くんは猛ダッシュで、荷物を取りに行ったのかな。
背の高い影はやっぱり高田くんだった。
「はやいね。私、ゆっくり来すぎたかな?」
あれからすぐに教室を出てきたのに、荷物をとりに行った高田くんの方がはやいなんて。
「いや。全然。
広瀬さん、帰ったらいけないと思って、ダッシュしたから」
嫌みのない爽やかな笑顔。
「帰らないよ」
その笑顔を見てたら、開いた傷の痛みも
忘れることができそうな、そんな気がした……。
私たちは学校の外に向かって、並んで歩く。
「俺、チャリ通なんだ。自転車取ってくる」
高田くんは駐輪場に向かうから、私も一緒に行く。
「広瀬さん、家どこ?」
「私、高源寺。バス通だよ」
高田くんは驚いたように、口にする。
「そうなんだ?俺、田坂だから、結構近いかも」
そう言えば、家から学校まで来る途中のバス停に『田坂』ってところがある。
同じ方向なんだ。
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