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「広瀬さんは?
部活とか入ろうとか思わなかった?」
「うーん。私、運動苦手でさ。
かといって音楽が好きとか、
絵が描きたいとか、そういうのもないし。
中学では幽霊美術部員だったけど、
高校では結局何にも入らなかったんだ。
でも、たまに放課後グラウンドで、みんな汗流して走ってるの見るとさ、
やっぱ青春してるなぁって、うらやましくなるけどね」
「広瀬さんって、おばちゃん入ってんな」
高田くんはプハっと吹き出して笑った。
「ひどい……」
そうは言うけど、高田くんの言葉にイヤミなんて全然感じなくて、私は高田くんの肩を軽く叩いた。
「ね、どうして、私だったの?
高田くん、モテそうなのに、
っていうか誰でもよかったとか?」
「誰でも良かったわけじゃないよ」
高田くんはちょっとムっとして、しっかり否定した。
「俺、モテるんじゃ?って思うことはあるけど、追いかけられるより追いかけたいっていうか……」
「わ。モテる男は、言うことが違う」
茶化すように私が言うと、高田くんは、びっくりするくらい真面目な顔で言った。
「流されて付き合ったりするのは嫌だしさ」
ドキッとしてしまうほど、まっすぐに私を見てる。
このモデル級の甘いマスクのこんな表情で見つめられたら、
女の子だけじゃなくて、男の子でも
高田くんのことを好きになってしまいそうな視線だ。
トクントクンと動き始めた胸の鼓動を感じながら、私は静かに聞いた。
「でも、私……接点ない……よね?」
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