新しい恋

12/28
前へ
/293ページ
次へ
「広瀬さんは? 部活とか入ろうとか思わなかった?」 「うーん。私、運動苦手でさ。 かといって音楽が好きとか、 絵が描きたいとか、そういうのもないし。 中学では幽霊美術部員だったけど、 高校では結局何にも入らなかったんだ。 でも、たまに放課後グラウンドで、みんな汗流して走ってるの見るとさ、 やっぱ青春してるなぁって、うらやましくなるけどね」 「広瀬さんって、おばちゃん入ってんな」 高田くんはプハっと吹き出して笑った。 「ひどい……」 そうは言うけど、高田くんの言葉にイヤミなんて全然感じなくて、私は高田くんの肩を軽く叩いた。 「ね、どうして、私だったの? 高田くん、モテそうなのに、 っていうか誰でもよかったとか?」 「誰でも良かったわけじゃないよ」 高田くんはちょっとムっとして、しっかり否定した。 「俺、モテるんじゃ?って思うことはあるけど、追いかけられるより追いかけたいっていうか……」 「わ。モテる男は、言うことが違う」 茶化すように私が言うと、高田くんは、びっくりするくらい真面目な顔で言った。 「流されて付き合ったりするのは嫌だしさ」 ドキッとしてしまうほど、まっすぐに私を見てる。 このモデル級の甘いマスクのこんな表情で見つめられたら、 女の子だけじゃなくて、男の子でも 高田くんのことを好きになってしまいそうな視線だ。 トクントクンと動き始めた胸の鼓動を感じながら、私は静かに聞いた。 「でも、私……接点ない……よね?」
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3938人が本棚に入れています
本棚に追加