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口ごもる私に、泉は視線を合わせて尚も言い募る。
「蘭のお父さんを殺したのは、きっと鈴じゃない。だったら、鈴と協力して本当の犯人を探そうよ!」
「協力して……?」
ずっと憎み続けて来た【剣】と協力?
そんな事が可能だろうか。いや、でも、相手が鈴ならば……。
分からない。どうしたら良いのか、頭が働かない。
口を開く事も出来ずに黙っていると、部屋をノックする音が聞こえ、扉の向こうからメイドの声がした。
「お嬢様、お客様がお見えになってます」
すると、泉が立ち上がり扉を開ける。
「蘭は今、具合が悪いの。引き取ってもらって」
「しかし……正木家の方なのですが」
メイドが困ったように、こちらを伺ってくる。正木家は、賓客でもある。それに、この間のパーティーでは、招待して頂いたのに、あの青年の出現で浩二くんとはゆっくり話も出来なかったのだ。
「分かったわ。浩二くんね? 広間へお通しして」
「いえ、それが……浩二様のお兄さんと仰っています」
「……誠一さん?」
誠一さんと会ったのは、あのパーティー1度きりだ。
それなのに、私に一体何の用だろう?
「とりあえず、広間へ案内を」
「かしこまりました」
ふっと一息つくと、鏡の前に行って髪を整える。
こんな大事な時に客なんて……と思ったが、反対に他人に会っていた方が冷静さを保てるものかもしれない。
「蘭。あたしも一緒に行くからね」
「泉、大丈夫だよ」
「駄目。見てないと、蘭はすぐに無理するんだから」
仁王立ちになって宣言する泉の姿に、何だかホッとした。
私は、独りじゃない。
「分かった。じゃあ、行こう」
誠一さんを待たせている広間へ向かうと、彼はソファに座って待っていたが、私の姿を見て立ち上がり、会釈をしてきた。
「お久しぶりです。誠一さん。どうぞ座って下さい」
「突然伺って、申し訳ない」
「いえ」
メイドがお茶の用意をして下がると、私はさっそく疑問をぶつけてみた。
「それで、私に何の用で?」
「パーティーで、浩二が君のガーディアンだと言って、そこの彼女を紹介してくれて、ここに来れば会えると思って……」
「私ではなく、泉に用事……ですか?」
「単刀直入に言わせてもらう。君のガーディアンは、水無瀬 泉……【始まりの審判】だね?」
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