『電気羊の残滓』

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 そこには、良く分からない数字とアルファベットの文字列が何行も並んでいた。  数字はどうやら日付や時間を表しているらしいのは分かったけれど、これはなんだろう。   「あ、これは、ベックンのログファイル、です」  背後からそんな声がした。僕の肩越しに画面を覗き込んだ越谷さんだった。 「ベックン、というのはなんだい?」 「それについては後で説明します、先輩。それより、ログファイルというのは?」  あう、とどこか寂しげな声を越谷さんが発したのは、気にしないことにした。   「ログファイルというのは、履歴、記録だね。見たところ使われている言語からして、ロボットのものじゃないかな。博士がよくロボット制御に用いていたのがこれだったはずだ」  アリス先輩は学園探偵である前に、プログラマーとしての才を持つ人でもある。こういった類は得意分野なのだろう。   「このログファイルは、その『ベックン』というのがいつ、どこで、どのような判断をしたか、その活動記録を残してあるんだよ」 「こんなに細かく、数分単位で、ですか?」  先輩は頷く。 「何かエラーが起こった時、それが一体何が原因で発生したのか、どこにその理由があるのかを探るために、細かなログを残すというのは必須なんだよ。どんなシステムだってログを吐く機能は有している。読んでみると昼休みの時間帯に最後のログを吐いているね。ここが、そのベックンとやらが壊された時間と見ていいだろう」
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