『電気羊の残滓』

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 まずは僕と先輩について説明しなければならない。  僕は……ええと、面倒だから『ワトスン』で。先輩にはそうとしか呼ばれないし、今は明かす必要もないだろう。  ワトスンといえば、かの有名なシャーロック・ホームズの助手にして、ホームズシリーズを執筆したという『設定』の男性だ。  そこから分かる通り僕は男だし、先輩の助手みたいなことをしているから、あながち間違ってはいない。    僕が探偵の助手となれば、当然のことながら先輩は探偵と言うことになる。  彼女の名は、藍空【あいそら】アリス。  僕達の通う私立雨洗美【あまらび】高等学校において、学園探偵と呼ばれる人だ。    アリス先輩は2年生。僕は1年生。  僕は先輩が部長を務めているミステリー研究部の部員だ。  先輩との出逢いや僕がこの部に入るきっかけについては……これも、割愛ということで。    学園探偵としてのアリス先輩は、非常に優秀だ。  僕が言うと単に身内だからよく言っているだけに聞こえるかもしれないけれど、そうじゃない。    あの人は、『本物』だ。    それはワトスンとしての僕の立場を抜きにしても、断言出来る。
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