『電気羊の残滓』

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 そんな彼女だから、学校内で起きるようなちょっとした問題はたちどころに解決してしまう。  僕は、ワトスンとしてだけじゃなく、次期学園探偵となるべく先輩の教育を受けている。  事件が起きる度に彼女の手伝いをしたり、くっついて回ったり。    でも僕に出来るのは、彼女の後ろを必死に追いかけることだけ。  僕にはやはり、人の影を追いかけることしか能がないらしい。    ――閑話休題。    そろそろ事件について触れよう。  事件が起こったのは5月のこと。  毎日のように雨が降り、いつでも空気がじめじめとした、嫌な時期だった。    4月にこの学校に入学して毎日の忙しさに目が回るようだったが、なんとか五月病になることはなく済んでいた。  というか、五月病どころではなかった。    放課後。僕がミステリー研究部の部室で小説を読んでいると、勢いよくバアンと音を立てて扉が開いた。 「さあ、みんな!事件だ!現場に行くとするよ!」  身長150センチ弱と小柄で、満面の笑みを浮かべて現れたのは、この部活の部長。藍空アリス、その人だ。
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