『電気羊の残滓』

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 そんな『博士』の助手なのだから、この越谷さんもそういった才能を持っている人なのかもしれない。  ……見たところどっちとも言い難いのだけど、人は見掛けじゃ判断出来ないからなあ。   「では早速現場と、何が起こったのかを教えて貰えるかな?」 「この、部屋、です。どうぞ」  越谷さんは背後の扉を開け、僕らを招き入れた。  そこは現在使われていない空き教室なのだが、博士が研究所として使っている部屋の隣ということもあって、彼の発明品置き場や実験場と使われているという話は耳にしていた。  まず入ってすぐに見えたのは、部屋のあちこちに置かれた何の目的があって用いるのかも分からないような機器と一台のパソコンだった。    そのパソコンの周囲に、何かが壊されたような破片が散らばっていた。   「さっき、この部屋に、入ったら、こんな感じで、何か壊されたような、跡があって、もともと、そんなのは、なかった、です」 「だから私に連絡をくれた、というわけだね。なるほどなるほど、これは確かに事件の匂いだ!!」  そう叫んだかと思うと、先輩はポケットから虫めがねを取り出して、床に這いつくばるような姿勢で現場検証を始める。  どんな些細な証拠も見逃さないという姿勢が見事に現れたその姿勢は、いつ見ても女子としていかがなものかと思ってしまう。    こうなってしまうと暫く証拠集めに没頭してしまうので、その間に僕は越谷さんから話を窺うことにした。
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