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「この破片、何が壊されたものか分かりますか?」
「恐らく、ベックンではないかと、思います」
ベックンという言葉に聞き覚えはないので、恐らくその壊されたものに付けられた名前なのだろう。
「その、ベックンというのは、一体どのようなものなんですか?」
僕がその質問を口にした途端、越谷さんは急に僕の前へとずいと歩み寄って来た。
「ベックンはですね!私が開発した人工知能搭載自動掃除機のことですっ!」
「は、はあ……」
「世間で最近売られている自動掃除機には人工知能が搭載されていることはご存知ですよね!それは如何に効率よく部屋を掃除するかということに特化したものなのですが、私が開発したそれは大きく違うんですよ!分かりますか!」
鼻息を荒くして語る越谷さん。先程までと本当に同一人物かと疑いたくなるレベルだ。
「ど、どう違うんですか?」
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、僕の手を取る越谷さん。
「私はですね!笛郡【ふえごおり】先生の11年論文に書かれた基礎理論を元に、ベックンに一種の『好奇心』を実装させたんですよ!知能としては2,3歳児程度のものですけどね!行動パターンとしては子犬のそれを参考にしたので、犬みたいなものです、ベックンは!」
荒い息が僕の顔にかかる。髪の間から覗く彼女の眼は爛々とした輝きに満ちている。
誰か、助けれくれ。
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