本物の王子様たち

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『僕が王太子の座を諦めるから、何時になってもいいからお母さんに会わせて欲しい』そうお願いする為に離宮から帰って午後の授業を逃げてルマンディオを探した。 ーーーーーーーそれに、幼いジェンナータと話していると母恋しさが余計に募る。 王宮内での僕の振舞は積もり積もっていつの間にか殆ど顔を合わせることもない父親、…国王にも嫌われているのだと肌で感じる。 まだ王子としても未熟なまま厄介払いみたいに婚約を持ってきたのはそういうことなんだと思うし、なによりこの世界は記憶にある物語と違って誰も僕を必要とはしていない。愛していないんだ。 (もしかしたら、ソレが僕の魂の運命なのかも…) 誰にも愛されない、必要とされない、だけど役割だけはあって…そういう、それだけの人生を歩むこと。前世で罪を犯した覚えはないしかといって善行も積んでなかったから、多分何度生まれ変わっても「こういう人生」を何度も繰り返す役割で。 もしかしたら神様がチャンスを与えてくれて異世界転生っていうか小説の物語の中の主人公として生まれ変わらせてくれたのかもしれないけど…だけど僕はその世界でも上手に生きられなくて。 馬鹿で間抜けで愚鈍で…ああすればよかったっていつも後悔ばかり。 ……どうせ頑張っても報われないなら、もう頑張りたくない。 全部全部ルマンディオに任せて逃げたい。もう面倒なことなんかしたくない。 そう鬱々と考え事をしながら王宮内を彷徨っていると目立つ赤褐色の揺れる巻き毛が目の端にとまった。 本宮にある北館の図書室に彼は消えていった。 ルマンディオの後を追って図書室にはいった。 館内は広く探すのにちょっと時間が掛かっている間に見つけた先の彼は何冊もの本に囲まれて机に座っていた。 真剣に調べ物をしている彼に声を掛けるのも憚れて大人しく事が終わるのを待つ。 ただちょっと待つだけなのもつまらなくて近くにあった本を適当に取って見ていたら、いつの間にかルマンディオを見失なってしまった。 「え、やだうそッ」 出入り口近くの本棚の陰に隠れるようにしゃがみこんでいたから出て行ったのなら多分気が付くはずだし…と館内をまたも探し回っていると、会いたくない人物にまで遭遇してしまった。 「おや?」 「…ぅ」 ジェンナータの義理の父親で僕の暫定婚約者のラファイエットと。 「午後の授業はサボったんですか?」 「ぁ、ぅ…いや、あの…」 言い訳を探して視線を彷徨わせたら、ここが児童書エリアだと気が付く。 「えっと、ちょっと絵本をさがしてて…」 言い訳に苦しいとわかっていても、とりあえずこの場にいる正当性を主張してみる。 「それは、ジェンナータの為に?」 「えぇと、はい…」 「ふぅん。ではその手の本もですか?」 指摘されて気が付いた、僕は適当に読んでいた海洋生物の図鑑を持ったままだった。 「あ、はい…あの、海沿いの育ち、なんですよね…?」 運よく言い訳が押し通せそうな本を持っていてよかった…っ! この世界の図鑑って説明文が長ったらしいけど絵とかも描かれているし、下手な文章だらけの本よりはずっとマシ。
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