「俺の」物語は始まる。

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これは、俺はどうするのが正解かな? このままちぐはぐなやり取りを見過ごせばストーリー通りになるだろう。けれど自国に戻ったヌルマンカからの印象は最悪だ。婚約が成立したとてジークフリート懐柔は困難を極めそうだ。 かといって間違いを指摘し領主を凶弾すればストーリー潰しになって今後の予想がつかなくなる。 だったら… 「発言をよろしいでしょうか?」 胸の高さにまで右手を上げて発言の許しを王に請う。 「…よい。」 王からの短い返答をもって椅子から立ち上がり使節団に礼を取る。 「一言、お礼を申し上げたくあります。この度はオメガであるわたしとアルファであるヌルマンカ王国の王子の縁を結んでいただきありがとうございます。」 さっき気が付いた。この世界でも当然だが国が違えば言葉が違う。それでもおそらく「アルファ」「ベータ」「オメガ」の単語だけは世界共通っぽい。 俺の言葉自体は分からなくともその単語を発したこと、それから礼の取り方がオメガ様式だったことで「俺が」オメガだということは男の外見ではわからなかったとしても理解はしたはず。 深くお辞儀をし、着席する。 訝し気な表情をした第二王子はそれでも王の前なので発言は慎んだが、俺の行動からも言いたいことは少なからず伝わったはずだ。いや、察しろ!頼むから。 俺がなんで「今」こうしたかを、察してもらえればいい。後から何を聞かされてもそこに俺の意思はなかったとおもってください。 時間が経ってからの後戻りできない状況になってからだと、そう、心象的に俺の事が一番不満や疑いの対象になっちゃうからね。そこだけは最低限回避したいです。現段階では、そう。俺は懐柔作戦に舵を切ることに決めたので、「お礼もちゃんと言える良い子だぉ」になりましょう! 、
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