本物の王子様たち

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「……………腹を切って出産した、と?本当にそう言っていたのか?」 「うん。」 「王妃が亡くなったのは、…そういうことか。表面の皮膚や肉の傷の縫合術ならいざ知らず臓腑に及んだ傷は生き残ることは難しい。」 よしんば生きながらえたとしても体内に残った縫合糸が異物として残り後遺症があって壮健とは言い難くなる。 「え、でも帝王切開って…」そんなに珍しいことでもないでしょう?と言いかけてそういえばここは現代ではなかったことを思い出す。 現代に生きていた頃は小学校低学年の道徳の授業かなんかの中で『お父さんお母さんに自分が産まれてきた時のことを聞こう』みたいなのがあった。クラス31人で僕と同じだった子は7人いたから珍しいと言えばそうかもしれないけど僕含め皆元気にしていたし、お母さんもちゃんといた。だから『特別なことじゃない』とおもっていた。 だけど、そう。この世界は御伽噺みたいな魔法のある世界なのに、所々で文明が未熟で驚くことが多い世界。 あー…前世では母さんを苦しめる自分を死なせて、今世では自分が生まれる為に母親を殺したんだ…って。 「…王妃様は、僕を産む為に命を懸けてくれたのに、…このままでいいのかな。」 いままで育ての母に愛情を与えられていたけど、生母が命を賭してくれたことも愛情だったのかな。だとしたら僕はやっぱり、王様になって恩返ししなくちゃいけないんじゃないのかな。だってふたりのお母さんに愛されていたからこそこうして生きているんだもん。 僕が生まれて生きている意味って、ソレでしかないじゃん。 …って、考えたんだけど。でもこれは正解なのかな? わからない。ルマンディオもそうしたほうがいいって言ってくれて、たぶん満場一致なはずなのに…そうしたらいいのにそうしちゃいけない気がするのは僕だけなのかな。 「ねぇラファイエット、僕は――――むぐぅ」 どうしたらいいのか解らないから頭の中のことを彼に聞こうとしたのに口を塞がれてしまった。頬が触れ合いそうな至近距離に顔がある。抱き込まれて口に手がある。 「…シっ!」 「????」 「……ジークフリート殿下が来ています。お静かに。」 耳元でひっそりと言われて黙る。
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