邂逅。

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邂逅。

―――――――5年後。 ジークフリートとの婚約は4年目になり、俺はあと4ヶ月もすれば16歳になり成人を迎える。 このタイミングで、物語が始まるのだ。 本物の王子様であるエリオットの存在の知らせから一ヶ月ほど経ってから晩餐の席が設けられることとなった。 これが俺とエリオットの邂逅となる。 偽物の王子と本物の王子はお互いの存在を認識してからゆうに一月もの間を悶々と過ごすのである。 ルマンディオはその期間を焦りと絶望のなか過ごし、まだ見ぬエリオットへの憎しみを育てていく。 だからこそだろう。つい最近まで平民であったエのリオットの振舞やマナーの未熟さを一々指摘しては馬鹿にし、陛下や婚約者のジークフリートへ自分こそがと誇示したかったのだ。 そしてそのルマンディオの振舞こそが心象を悪くするのだ。 …小説のストーリーでは、ね。 しかしこの場の「ルマンディオ」たる俺は違う。 物語を知っているからそんな愚かしいことはしないし、もしすれば断罪ギロチンコースまっしぐらだ。そんなバッドエンドなんかなりたくないので大人しく行儀よくする。 なんだったらとっくの五年前から記憶を取り戻した転生チート野郎なんで、むしろこの日を待ち望んでいたぐらいですよ。 いやー…長かったね。五年って長くない? (それに俺がどうこうしようとエリオットとジークフリートは一目で恋に落ちる設定だし?) 【運命の番】と、物語の中で何度も書かれていたふたりは真実の愛で結ばれる未来が決まっているのだ。 その二人を邪魔するのが俺の役目なのだが…まぁ、そんなことしようがしまいが未来が決まっている以上、無駄な足掻きだよなぁ、とおもう。だからやんない。 そもそも物語のルマンディオとは違い、俺は別に王子でなくなることに抵抗する気はないし、邪魔する気も無い。 むしろ、とっととこのカップルをくっつけてこの国の未来は安泰だ!っていう方向にもっていきたい派。 いらぬ邪魔をして断罪されるよりも結ばれるべくして結ばれるふたりを繋いで早々にフェードアウトし、安穏とした人生を生きたいに決まってるじゃないか。 誰が好き好んでハードモードな人生を歩みたいとおもうものか。王族の贅沢な暮らしよりも前世同様に庶民で良いので、いや庶民だからこそ穏やかに日々の小さな幸せを見つけて笑って生きたい。 、
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