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だけどもどうやったって自分の安寧たる未来を確保するに必要不可欠なのもジークフリートだった。
彼は次代の王配に決まっている。
つまりは、元々が市井で育った庶民のエリオットの夫となり国王としての実務を担う存在だ。
ぶっちゃけこの国は今現在ギリギリの状態なんだよね。
現王含め三代続けて王の統治がパッとしていない。しかもそれぞれがまるで押し付けるように王位をとっとと譲ってるせいで三代目の今の今で50年ちょっとだ。なんだったら先王は地方で元気にいるぐらいの若さだ。
3代前の王が賢王として名を馳せたのにもかかわらず先々王は在位6年と短く、先王が成人し王妃を迎えた途端退位した。
そんなことを繰り返し、今に至っているので内政はガタガタ、臣下も臣民も王家に期待していいいのか状態で他国の、それも小国の王子が実質的な王となるのだからいつクーデターが起きてもおかしくない。
だからこそ求められる期待に際限がなく、ジークフリートには頑張ってもらわねばならない。っていうのが正直なところ。
(だってクーデターが起きて国が崩壊したら安寧なんか夢のまた夢になっちゃうからねぇ。)
ってかこんなこと小説に一言も書いてなかったんだけど…そこらへんはどういうことなんだ?と一回作者に詰め寄りたい。
けれどもだからこそ、この世界は今の俺にとっての「現実」以外の何ものでも無いんだなぁ、とおもう。小説のストーリー以外の時間を、確かに生きているのだ。
かくしてヌルマンカ王国の少年王子は14歳という若さで輿入れしたわけだが、まぁそこからも俺は苦心したわけよ。
そもそも片道2ヶ月もある国だよ?異文化過ぎるだろうっていうのに慣れてもらうところからのスタートだよ。
大体にして婚約成立からの輿入れにも1年近く掛った。それは当然だとおもっている。
使節団が祖国に帰って彼が王国に輿入れするまでに4か月。…で済むわけない。
いやそうだろ。
王都がある旧ユラムス国内からアドルスネイブ公国の端まで軍馬でも2週間の道のりを王族ならば休憩や静養を含んでその倍の1ヶ月は要するし、海を越えるのにも最短が10日間だとしても下船後の体調を整えるための静養は3週間は必要なくらい近くはない遠い隣国なのだ。
残りの8ヶ月だって慌しかったのは予想がつく。
ヌルマンカ王国の内政やなんやかんやも、意向も、話し合うには時間が短すぎる。
それでも、誰も得するようなWIN‐WIN-WINな一見損のない話に最初から責任を負わされたであろうジークフリートは、それなのに立派に顔を上げてランバート王国語をはなし婚約の調印書にサインした。
流石はスパダリチートを生まれ持って備えているアルファだな、とおもった。
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