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住宅街から走り、この森の中に入り暫く。
俺は開けた場所に辿り着いた。
広さは8000m^2。
家どころか、豪邸も何個か。
大規模な研究機関なら余裕で建ちそうな位広大な円形の空き地だった。
今まで森の中を走っていたのが嘘のようにそこは開けていた。
生えている草などはなく、凹んでいないクレーターのようだ。
木々もないため空を覆っていた葉っぱの屋根も取り除かれ、黒い天空の中心に丸い月が黄金の光を煌々と照らしているのに今頃気が付いた。
――なぜここに来たのだろう……
原始的本能かそれとも魂に刻まれた記憶からか。
こここそが俺自身の起源だと知らされていたからこそ、無意識的に足がこの地に向けてしまったのか。
だがそんな感傷的に浸っている時間は無かった。
後ろから来る影から逃れなければならないというのも理由の1つだが……
「――――ぐッ!!……あぁッ!!……」
頭痛。
しかも先程までのとは比にならない尋常ならない痛み。
意識を手放してしまった方が楽になるのではないかと考えさせられるような芯からの痛み。
そして同時に脳裏に走るノイズ混じりの映像。
テレビ画面のように砂の嵐とバチバチと電気的な音が混ざったような粗い映像。
直接脳に流れる意味不明な映像に、外から頭の中をかき乱されていく感覚。
そしてメガネがズレ、視界が二重に歪む三重の歪みに吐き気も感じる。
――――ゾワッ
背筋に突如感じる悪寒。
そこで俺は今まで必死に逃げていたものに一瞬のタイムラグの後目を向けた。
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