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☆
青空が一面に広がる。
つい五日前までその空を漆黒が覆っていたなどと話されても信じられない位綺麗な快晴だ。
眼下では未だ復興作業が行われているが元の光景に戻るのにそう時間は必要でないだろう。
――アリアとの会話を終え、俺は一人鳳凰学園の屋上に来ていた。
爽やかな風が頬を擽り、胸の中につっかえていた棘が解けた事で一層心地よく感じる。
しかしここで終わってはいけない。
本当の勝負はここからなのだから。
異世界に跳ぶのは今日から一週間後。
手垢の着いた言葉だが、『俺達の闘いはこれからだ』という奴だ。
懐に微かな希望を宿し、こことは違う世界にいるであろう彼女の姿を思い浮かべる。
フィオラには何度も助けてもらった。彼女がいなければ今の俺はいないと言っても過言ではない。
本当に闘いを終わらせる為に。
アリアの罪過を取り除く為に。
そして――かけがえのない存在を助け出す為に。
「今度は……俺がお前を助ける番だ、フィオラ」
俺の言葉は彼女に届いていないだろう。けど、己自身の決意を改める為にあえて口にする。
フラグなんて知った事では無い。そんなもの、俺がぶち壊してやる。
『不可避な現実』なんて、塗りつぶしてやるさ。
――青空の下、俺は一人そう心に刻み込むのであった。
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