エピローグ

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☆ ――ミズガルズ・某所 異質な闇が周囲を囲う一室。 虚空に浮かぶ水球を下から見上げる二つの人影。 その中、片方が口を開く。 「…….これが例の?」 「あぁ、聖杯色の魔力の持ち主だ」 それにもう片方が答える。 細部は視認不可能だが、声色からして女性と男性だという事は判別出来る。 「奇跡の魔力の持ち主、これでドラゴン達もパワーアップ出来るわ」 含み笑いを堪えたように女性が言う。 それに対し、男性の方は特にリアクションを起こさない。 ただ、上方の水球に目を向けるだけ。 水球は虚空にて、まるで強力な表面張力に守られているかのように時折表面に波紋を生じさせている。 おおよそ科学だけでは実現不可能な産物。 男性はその水球の中の影に目を凝らせる。 「ラグナロクまで秒読みという訳か」 「別世界のオーディン達は失敗したと報告を受けたわ。でも、此方は同じ轍を踏んだりはしない」 女性はそう言うと、もうする事は無いとばかりに踵を返す。 突如として現れた扉を開け、男性に振り向く。 「では、後は任せたわよ」 「分かっているさ、『フレイ』」 フレイ。 それは北欧神話において勝利の神と呼ばれた存在。 その名を口に出し、男性は再び水球の方へと目を向ける。 巨大な水球。 その内部に見えるのは……黄金の髪の少女。 意識の無い彼女だが、その時僅かに口が動く。 紡がれるのは一人の少年の名前。 しかし、それを受け取る者はいない。 今は、まだ――――
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