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1 【北城ルシア】
「たーいーくーつーだーなー」
「うるさいな」
場所は寂れた商店街の一角。
通行人は腰が曲がったジイさんや『あくまで道として使ってますよ』と言った中年くらいか。
店も半分以上が昼間からシャッターをおろしているし、商店街という形のみが残ってるだけなんだな、とか考えてみたり。
「ほーらー。なんかないのー? おっもしろいことー」
隣で鶴が間延びした声で言う。
せっかく高二の夏休みだってのに、初日からこいつに捕まったのは、我ながらツイてないと思う。
細川鶴という女子高生は刺激がないと生きていけない女だ。
常にトラブルの渦中に飛び込まないと気が済まない女だ。
なぜか俺を巻き込む形で。
「ねーえー。なんかオモシロイことない?」
「腕を絡めるな、ボケ」
「ぶー。そーゆー反応ないんじゃない? そこらの男なら感激しすぎて心臓止まるってのにー」
「もう慣れたよ」
そりゃ一日一回は右腕に絡み付かれりゃ、誰だって慣れるっての。しかも小学校からってオマケつきだな。
約十年密着されてきたんだ。今さら緊張するかっての。
せっかく胸が当たってるのにな。
これが他の女だったら心臓バックバクだな。断言できる。
まぁ、これのお陰で周囲から避けられて高校での男友達は一人になってるがな。
「ふーん。そーくるんだ」
ったくよ。
幼馴染みで家は隣でずっと同じ学校同じクラスの女っていや、なんだかんだで朝起こしにくる世話好きキャラじゃないのかね。ツンデレでも可。
いや、これは願望なんだろうが、鶴みたいなのは違うと思うんだ。
だって、中学の修学旅行の初日に『退屈だから帰る』なんて言ってホントに帰るんだぜ、俺巻き込んで!
しかも小遣い全部使っても足りないってんで、ヒッチハイクとかでなんとか帰ったら同級生がお土産片手に帰宅中っていうね!!
「こーんな美女と密着して、興奮しないなんて…………ホモなの?」
「俺は気遣いが出来る女が好みなの。間違っても騒動の中じゃないと生きられないようなヤツは御免だね」
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