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あたしは、図書室を一周したあと、先輩のところへ行き、先輩に声をかけた。 先輩は、両手を伸ばして身体を起こして、「マジで寝てた」と、笑った。 「もう、帰るの?」 先輩に聞かれて頷くと、 「一緒に帰る?」 と、言われてもう一度頷いた。 一緒に学校を出て歩いていくけど、先輩はあんまり話さないで、試験どうだったのか分からない。 先輩のこと、全然分からない。 先輩がふと振り向くと、驚いた様子で立ち止まり、 「なんで泣いてんの?」 と、言われた。 「…ごめん、なさい。 でも…泣いてない…」 「泣きそうな顔してる。 あ、俺、ちゃんと合格したよ」 「えっ?」 「ごめん、ごめん。 ちゃんと言いたくて。だから、わざわざ図書室行ったんでしょ」 .
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