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そして扉が閉められる。僕は全裸で冬の脱衣場に泡だらけのまま放り出されたのだ。
めちゃくちゃ寒い。
「ソ、ソラネリア、慎也くんは悪くないから、せめて泡流させてあげてよ」
折葉が弁解してくれたからか、扉は開かれた。女子二人は湯船の中だが。
「……なんですか。こっち見ないでくださいいかがわしい」
この妙に僕にツンツンしてる子はこの家の住人の一人。ソラネリア・ミシェイラだ。
紐を召喚し、操ることできる。そして男性恐怖症。というか人間不信。まぁましにはなってきたけど。
「いや、僕悪くないからね?」
とりあえず泡を流して早急に体を洗い、露天風呂に逃げる。
そう。露天風呂もあるのだ。
しかし……
「とんでもない1日の始まり方だなこりゃ」
『お兄ちゃん、あたしもお風呂入りたい!』
……ちょっとくらい休ませてくれよ。今入ったばっかりなんだよ。
『えー』
ふぅ。
肩まで浸かり、先ほどの折葉の言葉を反芻する。
「どこか遠くへ、か……」
折葉の勘は尋常じゃないほど鋭い。遠くへ行く=死でないとしても、僕が誰かに靡いたり、あるいは捕獲されたりといった理由もある。
靡いたりってのはあり得ないが。
「何にせよ、要注意ってとこか……」
背中の傷が痛む。ずっと我慢しているんだけどそろそろ限界かもしれない。化膿したりする前に治療しないと……
『お兄ちゃん?』
……あぁもう。分かったよ。変わってやるよ。
『やたっ』
僕は鈴と入れ替わり、しばらく眠ることにした。
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