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……さむっ。
さっさと着替えなきゃ凍ってしまう。
「イテテテ」
背中が痛む。折葉のおかげで化膿はしてなさそうだけど、ちゃんと処理しなきゃいけないし、服着たら痛いし、上半身くらい裸でもいいだろう。
鈴、後で治療道具貸してくれる?
『いいよ。というか、お兄ちゃんそんな傷でよくお風呂入ったね』
我慢してたんだよ。
『強がりなんだから~』
おかしそうに僕の中で笑う鈴。
「お。珍しいね」
階段を降りると後ろから声をかけられた。
いつのまに後ろにいたんだこいつは。
「何故に上半身裸なのかな?」
「背中の火傷が酷くてな。ちょうどいいから治療してくれない?」
僕の後ろに突如現れたこの少女マリー・カレントも、この家の住人だ。
能力は生き物に気づかれず、目を欺く能力。
だから僕の後ろから突然現れたような錯覚を覚えるのだ。
マリーはこの能力を悪用して僕らを驚かす。特に折葉。
折葉を驚かせ、吹き飛ばされる。
学習しろよって思う。
「いいよ。先にラボに行っといて」
ラボ―――それは地下二階だ。地下一階の資料室の棚の後ろから入ることができる。
どこの組織だよって思ったやつ。
共にいい酒が飲めそうだよ。
ほんと、テロリストじゃないんだから。
「……さむっ」
そして相変わらずここは寒い。傷口が凍りそうだ。
「やぁお待たせ」
マリーは先ほどのジャージ(寝間着)から白衣に着替えている。
「んじゃちょっと見せて」
ガチャガチャと音を立て、マリーは左腕を“付け替える”。
そう。マリーは左の、手足に加え目が機械だ。よくそんなので生きてられるなと、素直に感心する。
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