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『しっかりしてくださいよ。
もうみんな行っちゃいましたよ?』
『…ぇー…まじー…
…ほんと…ごめぇん…』
私達の代が、チームの中では最高学年なので
『寝坊で、先輩に怒られる』
という危機感はない。
しかも、このサークルでは
『二日酔いで動けない人は、合宿の午前中のテニスを休んでも良い』
という、恥ずかしくも有り難い、暗黙のルールがあった。
『午前中、メイコは、テニスをしないんですね?』
国語の先生のような、丁寧な特有の口調で、しんちゃんが最終確認をする。
チームのメンバーに何度も頭を下げる場面を想像しながら、
枕に埋めた顔を小さく縦に振った。
『…まったく…』
溜息のように吐き捨てたしんちゃんの呆れ顔が、瞼の裏に浮かび上がる。
『(…しんちゃん、
もう行っちゃうのかなー…?)』
広い旅館の大部屋に、私1人が寝ている、という状況を理解し、
急に人恋しくなって枕から目だけ覗かせてみるが、
コンタクトを外した視界では、彼の表情を読みとることはできない。
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