45人が本棚に入れています
本棚に追加
晴れ渡る夜空に浮かぶ満月に照らされる中、一隻の護衛艦が波間に航跡を残して往く
《みょうこう》‥‥‥
日本初のイージス艦こんごう型の三番艦として建造された護衛艦だ
現在は日本海にて僚艦の《あたご》と共に北朝鮮の弾道ミサイル発射警戒の任務にあたっている
政府からは破壊措置命令が出されており、日本本土に落下すると判断された時点で、破壊する事が可能だ
監視に当たる護衛艦の乗員達は、一般市民が寝静まった深夜にも関わらず、CIC(Combat Information Center)や各部署に当直の隊員が詰めている
シンと静まり返るCICに詰めている《みょうこう》の砲雷長の坂田三等海佐は、先程部下が煎れてくれた珈琲を口にする
苦い‥‥
が、眠気を醒ますにはこの苦さが必要だ
時計に目をやると、もうすぐ定時報告の時間である深夜の3時だ
「各部異常はないか、現状報告せよ」
坂田が対空・対水上レーダーやソナーに張り付いている当直員に呼び掛ける
「当艦の対空・対水上レーダーの探知圏内にアンノウンの反応はありません」
『ソナー、異常ありません』
「よし、引き続き警戒にあたってくれ」
いつもと同じ、定型文通りの報告
坂田の返答も、いつも通り決まったものだ
しかし、突然通信員が坂田を振り返って、切迫した様子で報告した
「砲雷長!《あたご》から緊急電!」
通信員の叫びを聞いて、CICにいる坂田を含め、全員が嫌な予感をした
その内容は、珈琲を飲むよりも、坂田の目を覚醒させた
最初のコメントを投稿しよう!