24人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
俺が着いた時には手遅れだった。
正直、戦場は幾つも渡ってきたから慣れというものがあった。
それなのに。
足が震えた。
全身血だらけで俺の同僚を殴り付けるそいつは、戦場で我を忘れるあの人みたいだった。
撫で付けた前髪を乱し、
鋭い目付きと粗暴な動き。
服装で違うと分かるのに、名前を呼ばずにはいられなかった。
「小十郎…様。」
バチィ!!
凄まじい雷光に目が眩んだ。
「…っ!!」
思わず目を背けた。
「ぐぁぁ!!」
悲鳴と、ドサリと倒れる音がした。
ゆっくりと目を覚ますと、男が倒れている。
そして。
その男の背後には先程思い浮かべた顔があった。
「小十郎…様。」
「大丈夫か?酷い有り様だな…。」
辺りを見つめ、小十郎が眉間に皺を寄せた。
体を震わせながら同じように回りを見渡すと、そこは見慣れた戦場そのものだった。
「とにかく、負傷者の手当てを急ぐ。ソイツは拘束しておけ。」
テキパキとした指示に、俺は無言でただ頷くしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!