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ぴっ、ぴっ、ぴっ。
規則的な甲高い機械音。
眠っている少年はまだ目を覚まさない。
「……ぅ…ん……」
もぞもぞと動く。
音は聞こえているが眠たいのだろう。一向に目を開けようとしない。
柔らかな濃紫の髪が真っ白なシーツによく映える。瞑った目元の下にできる睫毛の影。それが分かるのも少年の肌が白磁のように滑らかで白皙のようだからだ。
すぅすぅと静かな寝息。
だが目覚ましにそんなのは関係ない。お構いなしである。
―――ぴぴ、ぴぴ、ぴぴ、ぴぴ。
気持ち良さそうに眠るのを邪魔するかのように機械音は大きく、早くなる。
それでも一向に起きない少年はの意識を覚醒させたのは――。
バンッ。
「ルーシス!!起きなさいっ!!」
広い部屋の中央の天蓋ベッドで眠るルーシスは薄目を開ける。
部屋の扉の反対側にはテラスに面した床から天井まである両開きの窓。そこからルーシスのベッドへは金色の朝日が差していた。
「起きないとキスするわよー?おーきーてー!」
ベッドへ駆け寄る女性。腰まではある金髪を巻いていて、歩く度にリズムよく跳ねた。
青みがかった翡翠の双眸に朱唇、元気が良さそうな優しげな顔。
ルーシスの母親でミディアだ。
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