ーprologeー

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小学4年の頃だ。夏休みも終盤に入り宿題に追われていた暑い日。セミがうるさく鳴き続ける公園で、僕は一人ベンチに座っていた。太陽が容赦なく地面を焼き、アスファルトの上では陽炎が揺れていた。 そんななか、視界の端でチカチカと光を発するそれに気づくのに時間はかからなかった。最初はガラスの破片かビンだろうと思っていたそれは、真っ黒な板状の何かだった。周りの温度とは不釣り合いに冷たく、全体から薄紫色の光が漏れ出している。縦15cm、横7cm、厚さ3cmほどの大きさをしている。幼いながらの好奇心か、それともこの板がそうさせたのか、僕は無意識の内に板を持ち上げ一人静かに「おー…」と声をもらしていた。その時、 「待ちなさい!!」 突然だった。叫び声が響きセミ達が一斉に逃げ出し公園内が静まり返った。公園の入り口に目を向けると、一人の女の人が肩で息をしながらこちらを睨みつけていた。
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