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「落ちている物をホイホイ拾って、まったく犬なのかしら」
ため息まじりに呟くと彼女は僕の手から板を取り上げ僕の手を掴み歩き出した。腰まで伸ばした黒髪が日の光を受けキラキラと輝いている。そんな姿に見入ってしまっていたが自分のおかれている状況を考えると、
「なー、ねえちゃんって誘拐犯?」
「失礼ね。普通かもしれない高校3年生。でも何回目の高校3年生かしらね」
「留年ってやつか?何回目かわからないって、ねえちゃん年いくつ?」
「まったくどこでそんな言葉覚えたのかしら。それと女性に年を聞いちゃ駄目よ。嶺くん」
「なんで僕の名前……?」
「内緒。これから少し付き合ってもらうけど良いかしら?」
「付き合うって……どこに?」
「色んな所に。それとね嶺くん」
「なに?」
「あなたは大きくなると、とてもひねくれた性格になってしまうの。でもね、あなたのもってる優しさは必ず周りを幸せにできる。だからそれだけは絶対に無くしちゃ駄目。分かった?」
「わかったけど、変なねえちゃんだな。初めて会ったのに」
「初めてじゃないけどね」
その後のことはあまり覚えていない。繁華街へ行き、取り留めのない会話をしたくらいだった。
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