逃げ道

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ってか痛てぇ!! こいつ自分が治療したの忘れたのか?! 慌てて引き剥がそうとしたけれど、俺の胸に顔を埋めていて表情は分からないが、首にしっかりと腕を回している真の肩が震えているのに気付き、手を止めた。 「真...また泣いてんのか?」 「だってよ~~..... 俺、あの時ほんと怖くて、お前が来た時神様に見えて....」 「おいおい、そりゃ言い過ぎだろ...」 「...でも、お前に助けてもらった俺が言うのもなんだけどさ、俺、晶がこれ以上そういうことすんの見たくない....」 はっとした。 真は少し顔を上げて、俺と視線を合わせた。 つり目気味の目元を赤くし、切なさげに眉をさげた真の潤んだ瞳には、俺の驚いた顔が映っている。 「まだ俺なんか会ったばっかだし、俺だって真っ当には生きてないけど、でも、晶が誰かを傷つけてるのは見たくないし、傷つけられてんの見るのももっとやだ...!なんか、もっと、こう....お前はそんなことしなくてもいい奴って分かるんだよ...! 優しいし、気が利くし、お前なんか怖いの見た目だけで、だから.... っ?」 真の言葉のひとつひとつが胸に染み入ってくる。いつもみたいに饒舌ではなく、拙いけれど、必死な口調で俺に訴えかけてくる。 こんなに人に思いやられたのは久しぶりで、柄にもなく視界が潤んでくる。 今度は俺が、俺よりいくぶんか細い真の体を抱きしめ、顔を埋め、目から溢れるものを見られないようにしつつしばらく静かに泣いた。 真は静かに俺の頭を撫ぜ続けていた。
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