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      背中を厭らしく撫でた手は、ベルトの余った部分を掴んだ。腰に腕をまわされ、もともと俺の意思なんて聞こうとしないつもりだったのが解る。それでも聞いたのは彼なりの優しさ。紳士的な。 この一週間、睡眠時間すらまともに貰えないくらいハードなスケジュールの中彼が生活していた事はテレビを見ていれば当然解る事だった。生放送の、朝の情報番組やお昼のバラエティ深夜の歌番組とかで。テレビ局の問題で移動時間がそこそこ長くその間だけ仮眠という名のささやかな休養しか無いと考えると、彼の動物的生理的欲求は一体いつどこで満たされているのか全く解らない。 人形やCGのような人並み離れた顔やスタイルを持つ彼だけど人間というか生物なのだから当たり前に"そういう"欲もあるわけで。でも、こんな直球に求めてくるのは随分久し振りだ。 俺は拒んだんじゃなくて、驚いた。 だって、久し振りに帰って来ていきなりセックスなんて涼介は僕の人形じゃないんだから。って。彼が言っていたから。 別に俺はそれでも愛されていると解るからいいと伝えたけど彼なりのプライドというか。そういう譲れないラインだったんだろう。なのに今、彼はあの時言った言葉を忘れてしまったのだろうか。いやそれでもおかしくは無い。この間のドラマではかなりのセリフの量だったから。大ちゃんが言うには普通の俳優でもあの量はキツいらしいし。そんなセリフを覚えないといけなかったんだ。俺との日常会話(?)なんて忘れて当然な筈。結局あれは社交辞令的な。やはり彼なりの優しさだったのだ。 「駄目…?」 「っ//」 小さく首を傾げる姿は幼い子どものようで可愛い。なんとなく今、ファンの人が彼の顔を携帯の待受画面に設定する理由が解った。  
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