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      「あーなんか幸せかも僕」 「なんかってなんだよ」 もう腰の上まで溜まったお湯を感じながら裕翔の背中を優しく撫でる。 裕翔が笑うたびに揺れる細い肩が愛しくて抱き締めたくなる。 前に会った時よりも鎖骨が浮き出ている気がする。また痩せたんだ。ちゃんと食べてるのかな?もともと食が細い裕翔なのに。どうせまたゼリーとかしかまともに食べてないんだろうな。 「ご飯食べてく?なんか作るよ」 「ホントー?嬉しいなぁ。でもご飯食べるより涼介と話したいんだよなぁ」 「別に食べながら話せばいいじゃん。それに話す事そんなにあるのかよ」 「あるある!この間ねこんっなに大きなネコが道歩いてるの見てさ…って、涼介っ?」 くだらない話。 大袈裟なジェスチャーつきで楽しそうに話す裕翔に胸が痛いくらいに締め付けられて。我慢出来ずに裕翔の背中に抱き付いた。もうお湯は肋の所まできている。 驚く裕翔を無視して泡だらけのスポンジを持ったまま抱き付く力を強くする。 久し振りに会ったせいかもしれない。いつもだったら疲れてる裕翔に気を使って少しでも長く寝かせてあげるのに。俺と居る時間があるくらいなら家族の所に行かせるのに。どうも今回ばかりはそうも行かないみたいだ。俺は、俺自身は裕翔を離したくないらしい。 「…ゴメンね涼介」 「なんで裕翔が謝んの?」 「次はこんなに間空けないようにするね。すぐ帰って来るから。絶対。約束するよ」 「何言ってんの」 「寂しくさせてゴメンね」  
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