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      「わわっ!もうこんな時間!」 壁に掛かっている時計を見たのか裕翔は慌てて俺から離れた。 余韻に浸りたいけどそうもいかない。解っているけど裕翔の体温が恋しい。後少しだけ。裕翔を独占出来たら… 「涼介これ。よろしくね」 手首を掴まれポケットから出した何かを俺に握らせる。ヒンヤリ冷たいそれは手の平を刺す。 無理に曲げられた指をゆっくりと開くと、そこには飾り気の無い鍵があった。 俺のと似ているようで似ていない鍵。これは裕翔の家の鍵だ。 「掃除とか、色々任せるね。レイアウトも。涼介の好きなようにしていいから。お金は必要なら先に僕の口座から取ってもいいし後でいいなら領収書…」 「裕翔っ」 床にあった鞄を拾おうとした裕翔の腕を掴み抱き着く。ホントは腕なんかじゃなくてちゃんと抱き締められたらいいんだけど…。俺の性格上それは上手く出来そうにない。これで精一杯だ。 「涼介?珍しいね」 ふわりと微笑む裕翔。俺の髪を撫でる指が愛しい。この笑顔は後数時間で俺だけのものじゃなくなる。それが悲しい俺は貪欲だ。 「可愛い…」 「じゃあ普段の俺は可愛くない?」 「ふふっ、そんなわけないじゃん。可愛いよ。可愛いに決まってる。全部僕が大好きな涼介…」 人間という生き物は、幸せに貪欲だ。 裕翔はもっと沢山俺がほしいとは思わないのかな?  
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