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      「じゃあ俺、来週まで来ないから」 「家族旅行なんて仲良しだねぇ」 「へへっ、土産お楽しみにっ」 本屋を出て、分かれ道で足をとめる。 大ちゃんは笑顔で手を振った。とてももう少しで酒が飲めるようになる年齢とは思えない。 春休み中ずっと一緒だったから2日3日会えないだけで寂しいかも。 そう思いながらも俺も小さく手を振り大ちゃんに背を向けた。どうせ大ちゃんの事だからメールか電話は毎日してくるだろう。 「…ん?」 少し歩き、住んでいるマンションの部屋の前まで着いた。 ポケットから出した鍵を鍵穴にさすと違和感を感じた。 もしかして俺、出る時鍵しめてなかったかも…。 おそるおそる鍵を抜いてからドアノブを捻る。ガチャっと音を立ててドアは開いた。 やっぱりしめ忘れてた…。危ない危ない。早めに帰って来てよかった。 「ふー」 大袈裟に息を吐きながら玄関に入り靴を脱ぐ。ツンと爪先に何かがあたり、視線を落とす。 「…………」 見慣れた爽やかな色のスニーカーに思考回路が一瞬ショートを起こす。その一瞬をなんとか乗り越え、俺は持っていた荷物を全て玄関に置いたままリビングに走った。 「…ゆうとっ!」 嗚呼ホントに毎回神的なタイミングの良さだ。  
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