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      渋々立ち上がり隠すように置いてあったウェットティッシュタイプの化粧落としを一枚だけ取ってまた同じ所に座った。 こんな物大ちゃんが半分住んでると言ってもいいこの家に普通には置いておけないからな…。 改めてこんな風に顔を見るとなんとなく緊張する。相手は寝てるっていうのに。この顔が綺麗過ぎるからいけないんだ。俺じゃなくたって誰がこの状況に立たされたとしてもドキドキするに決まってる。もしファンの人なら気絶してしまうんじゃないか? ドキドキ煩い心臓を無視して頬にウェットティッシュをあてる。 ニキビとか毛穴とかそんな物は存在しないけど。彼は肌が白いから健康的に見せる為に少し色が濃いファンデーションをよく使う。別に肌が白いっていい事だと思うし肌が綺麗なんだからファンデーションなんて、って思うけどやっぱりテレビ的な事言うとそうもいかないらしい。そういう所はまだまだ俺の勉強不足。 「ん…」 「あ」 鼻に軽く触れると、重そうなくらい長い睫毛をつけた瞼がゆっくりと開いた。瞼から覗く大きな黒い瞳が焦点は合っていないが俺の瞳を捕らえる。 そういえばこの間発売だったアイドルばかりが載っている雑誌で、寝起きみたいな感じでベッドでこういう顔してたな。大きめのポスターもついていたから大ちゃんはその雑誌を二冊も買ってた。 まさかその顔が今ここにあるなんて大ちゃんは想像もしないだろう。 「涼介…お帰りなさい。はやかったね」 ふわりとテレビでみた事のある顔で微笑む。そしてウェットティッシュを持つ俺の手を掴んだ。 「明日からハワイ行かないといけないから二時間だけ…涼介に会いに来たんだ」  
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