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しかし、今回は願いが届いたのか、扉は何事もなかったかのようにあっさりと閉まった。
「あれは何だったんだ…夢でも見てたのか?」
「夢だったら良かったのにネ。」
ほっとしたのも束の間、何処からか声が聞こえてきた。
その瞬間、俺は体が軽くなったような錯覚に陥った。
浮遊感というやつだ。
正確にはエレベーターが一階へと急降下し始めたのだが。
俺はとっさに身構えた。
しかしその甲斐も虚しく俺は呆気なく宙を舞い、堅い床に受け身すらとれずに落下した。
「あがぁぁ!?……あ゙あ゙ぁぁ……。」
衝撃で手足が変な方向に曲がり、肋骨は折れて右の肺に突き刺さり、頭から落ちた為にどうやら頭蓋骨も陥没してしまっている。
俺は、穴の開いた風船に空気を入れているかのような、ヒューヒューと弱々しい呼吸であったが、どうやら完全には死にきれなかったようだ。
(あ゙ぁぁ痛゙い痛゙いイダい…いっそ死んだ方が…)
「アレ?まだ生きているノ?」
いつの間にか俺の横には、さっきの返り血少女がニヤニヤしながら立っていた。
「痛いネ。苦しいネ。でも安心して良いヨ?…私が早く楽にしてあげるからネ。」
そう言うと少女は、手に持っていた万年筆を、俺の心臓目掛けて一直線に振り下ろした。
何故かこの時だけ、俺の目には少女が天使のように見えた。
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