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有吉の身体が海に消えた。
結局誰も助けに行くことが出来ないままに……。
無数の幽霊たちも全て消え、何事もなかったかのように、今まで有吉がいた場所に激しい雨が降り注ぐ。
「行こう」
しばらく呆然と立ち尽くしていた浩太が、ずぶ濡れの服に気がついて声をかけた。
「何だったんだよ今の?」
「先生はどうなっちゃったの?」
健太郎と綾がほとんど同時に声を震わせながら聞いたけど、誰もそれには答えなかった。
いったい何が起こったのか? 今のは本当に現実に起こったことなのだろうか?
全員そう思っているけど、心の中で何かの間違いだと思い込もうとしていた。
これは夢だ。何かの間違いなのだ。
そうでなければ、有吉を見殺しにしてしまった、自責の念で押し潰されそうになる。
建物に戻ると、全員が事務所の中に入った。
「金子さん。警察……」
話しかけた松本の声が止まる。
そこには地面に倒れ、白目をむいている由加里の姿が……。
「金子さん!」
松本が駆け寄って由加里の身体を抱え起こした。
「いやぁああああああああ」
祥子は悲鳴を上げ、口元に手を当ててガタガタ震える。
「ダメだ。死んでる……」
松本は祥子の顔を見た。
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