始まった殺戮ショー

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「傘がないんじゃけど、ここに残るよりましじゃろ?」 松本が三人に問いかけると、三人とも頷いた。 一度も越えたことはないけれど、沖神峠を越えれば岡波に行けることは知っている。 歩き始めてしばらくしてから、松本はいったん振り返って施設を見た。 このままここに滞在しても、おそらく四国観光汽船の船が迎えに来てくれるはずではある。 さっき電話で東京の中学校の生徒さんが見学に来るから、迎えに来るのを遅らせて欲しいと頼んでいるのだ。 連絡しなくても、遅くとも七時までには迎えに来てくれるはずである。 ならば無理に雨の中を知らない道を通って岡波に向かうより、全員で迎えが来るまで滞在したほうが良くはないのか……? 時計を見ると五時を少し回ったところである。 まだ日没までに時間があるから、行くにしても残るにしても、ここが思案のしどころである。 そのとき…… 松本が視線を移した二階の窓に、青白い顔でこっちを見ている女の子がいた。 その瞬間、松本の頭から滞在の選択肢は消え、松本は慌てて振り返ると、少し先を歩いている中学生たちの後を追った。
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