岡波地区

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なだらかな下り坂を一気に駆け下りると、舗装された道路に出る。 右が下り左が上り、普通に考えれば下りが正解だろう。 松本はそう思って、下りの道を選択した。 他の三人もそれについて下り始める。 そこで四人は初めて、一人少なくなっていることに気がついた。 健太郎と綾がいて、浩太と松本。 「平尾さんがおらん!」 松本は峠に向かう道のほうを向いて叫んだ。 「どうする?」 松本に聞かれたけど、三人は何も答えなかった。 どうするもこうするも、今更戻っても……。 三人とも心の中で、平尾はもう幽霊の手によって無事ではないだろうと思ったのだ。 「先に助けを頼みましょう」 健太郎が松本に言う。 「う……そうじゃな。分かった」 松本は頷くと、もう一度峠に向かう分岐路の方を見て、心の中で平尾に詫びてから、 また先頭で岡波の町を目指して少し早足で歩き始めた。
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