岡波地区

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浩太は我が目を疑った。 平尾の手が自分の足首を握っていたのだ。 「ちょ、平尾さん!」 浩太は驚いて平尾を見るが、平尾は目を見開いたままの状態でピクリとも動かず、とても生きているとは思えない。 浩太は慌てて立ち上がると、平尾の手を振り払ってそのまま逃げようとする。 ところがガッチリと掴んだ手は取れなかった。 「ちくしょーーー!」 浩太は気が狂ったように叫ぶと、しゃがんで平尾の指を引き剥がしにかかる。 健太郎も同じようにしゃがんで、平尾の手の指を広げようとするけど、まったくビクとも動かない。 「助けてくれよ」 浩太が泣きそうな声で、平尾の指を開かせようとするけれど、ガッチリ掴んだ指をまったく開かせることが出来なかった。 「来たわ!」 綾が叫んだ。 健太郎と浩太が振り返ると、すぐそこまで島民たちが近づいて来ている。 「うわぁああああ」 浩太は気が狂ったように叫んで必死で指を引き剥がしにかかる。 でも一向にその指を引き剥がすことが出来なかった。
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