呼ぶ声

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女の子が倒れている。 一瞬綾かと思って息を飲んだ。 駆け寄って覗き込むと、それは茶和子だった。 「チャコちゃん……。何で? 何があったの?」 何があったと言いながら、早紀はそれが幽霊の仕業であると確信した。 「綾! いないの!?」 辺りには誰の気配もしない。 三階は屋上しかないはずだから、おそらくもうこの建物には誰もいないようである。 なら綾はどこに行ったのか? ふと早紀の脳裏に岡波に向かう道のイメージが浮かび、そのまま窓際に駆け寄ると窓の外を見た。 目の前に長い黒髪の女の顔。 「きゃぁああ」 早紀は驚きのあまり尻餅をついた。 二十年前のあの日。早紀の首を絞めた自分に似た女の幽霊。 もう一度目をやったが、そこに女の姿はない。 早紀は立ち上がると、恐る恐る窓に近づいて外を見る。 「あっ!」 そして早紀は叫んだ。
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