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木々がザワザワと騒ぐ。
「…来たか――――…」
殺風景な丘の上に立つ、一本の大木。そこに佇む1人の少年がいた。
ふっ…と小さく笑い、空を見上げる。
「今日こそ決着ってか?」
彼は自分にしか聞こえない程の声で呟くと、手に小さな光を宿した。
気がつけば、心の奥底の鼓動が速くなっている。
彼は空を見上げながら言い放った。
「―――来いよ」
ほぼ同時だ。
強い風と共に1人の少女が頭上から落ちてくる。
否、彼女は意図的に彼の元へと降下しているのだ。
その証拠に、彼女の手には大きな剣。そして目には強い殺気がある。
それらは全て一直線に彼へと向けられていた。
「佐弥-サヤ-っ!!今日こそ、てめぇの首をもらうっ」
「全く…女らしい言葉遣いにしろって…」
彼の手の光は、剣へと姿を変える。
「言ってるのにな」
そのまま自分の前へと持っていく…と、同時に激しい爆風があたりをおおう。
煙が晴れると、そこには2人が剣を交じ合わせていた。
「今更、変えられるもんじゃないんだよっ!!」
「ん、聞こえてた?」
そう言って、彼はわざとらしく笑う。彼女はそれが勘にさわったのか…更に力を込めて剣を押す。
ギリ…ッという音が2人の耳に聞こえた。
「怒るなよ」
「じゃあ笑うなっ!!」
「悪い悪い、お前が可愛くてつい…な」
「…っ!?」
彼は、一瞬だけ彼女の力が緩くなったのに気がつくと、その隙を狙って一気に力を加えた。
その勢いに押され、彼女はバランスを崩してしまう。
そして、彼女の形勢は五分五分から不利に。
「くっ…こんな暇人におされるなんて…」
「暇人?これでも俺は結構忙しいんだけど」
「嘘つけっ!!今だって、ぼーっと突っ立ってたじゃねぇかっ!」
「馬鹿言え、俺は会いたくてお前を待ってたんだよ……炎浬-エンリ-」
「…―――っ!?」
再び彼女の力が抜ける。
彼はその瞬間を見逃さなかった。
剣を大きく振り、ガァンッという音と共に相手の武器を数メートル先まで飛ばす。
すぐさま矛先を彼女の目の前に突き立てると、その勝敗は決まったも同然だった。
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