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その日も、いつも通りの毎日になる筈だった。いつもの様に周りの半分の給金を二倍の仕事量で受け取り、疲れて自宅に帰宅。そしていつも通りに遅めの夕食を済ませ、家事をささっと片付けて寝室に向かった所で、俺の日常は砕け散る。
「待っていた。君に届け物がある」
純白のローブに、鼻の部分が尖った鳥を模した仮面。白い手袋。白い革のブーツ。そして、聞いた側から忘れてしまう声。明らかな非日常がそこには居た。
「私はブリーム。ブリームだ。君の父から君に届け物がある」
「父から?」
父とはもうだいぶ会っていない。確か借金が返せなくなって行方を眩ませたんだったか。4、5年は昔の事だし今さら何が出来る訳でも無いので気にしていなかった。まさか生きていたとは。
「届け物は2つある。羽と情報だ。どちらから受けとる?」
「……羽と情報?」
何の事だかさっぱり分からない。だが羽よりは情報のほうが理解し易いか。
「情報から」
端的に、相手になるべく情報を与えない様に。あちらが情報を開示しない以上、こちらも情報を開示しない様に気を付けないと。そうでなければ平等な話し合いではなくなってしまう。
「盗賊団がここを襲う計画を建てている。決行日時は翌朝。そして、これが羽だ。森火事による上昇気流は強力だが短いぞ」
またもや意味の分からない忠告と共に渡されたのは黒い手袋。その甲には金糸で不思議な紋様が描かれている。
「これは?」
「羽だ」
この手袋が高価だろう事は一目で分かる。この紋様の意味もその内分かるだろう。だが問題なのは、この手袋の送り主が父だという事だ。金に困って家を飛び出した父が高価な手袋を購入出来る筈が無いだろう。だがブリームは羽だ、としか言わないつもりのようだ。
「これは本当に………」
本当に父からの贈り物かどうか聞こうとして顔をあげるが、そこには純白の羽が少量舞っているだけだった。
何故、と考えようとして思考を放棄する。考えた所でどうせ分からないだろうし、気にするだけ無駄だろう。
「はぁ~……」
思わず溜め息を吐く。どうやら眠るのは遅くなりそうだ。
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