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再びカーテンを閉め、穂香に接近禁止令を出した神楽は、カーテンの中でゴソゴソと着替えを続ける。
そんな音が消えたと思った瞬間、勢いよくカーテンが開いた。
「ど、どうだ……」
女の子らしい薄い青のワンピース姿。本人も恥ずかしいのか、こっちに視線を向けないでいた。
「似合う!似合うよ!」
興奮しながら絶賛する穂香の横で、俺は立ち尽くしていた。
「き、貴様はどうなんだ?」
恥ずかしそうに俺を見た神楽に、止まっていた思考が動き出す。
「あ、ああ……似合うと思う……」
激しい気性と威圧感、綺麗に伸びた背筋のせいで大きく見える神楽だが、実際は女の子らしく身長は決して高くない。
むしろ穂香の方が大きいぐらいだ。
そんな神楽が身を縮めるようにしているものだから、見た目では可愛らしい女の子そのもの。
加えてひらひらの付いたワンピースだ。
今まで俺に恐怖を与える女帝でしかなかった神楽が、なんとも可愛く見えてしまう。
「歯切れの悪い返事だな」
「す、すまん」
俺の印象が悪いものではない事を確信した神楽は、いつものように憎まれ口を叩いてきた。
それに対し、俺も憎まれ口で対抗してしまう。
「せっかく可愛い服を着てるんだから、せめて笑顔ぐらい作れよ」
こんな服を着ながらも、神楽の表情はいつも通り凛としている。
「笑顔?……こうか?」
「……………………」
人間、意識して笑顔を作るのは難しいものだと知ってしまう。
「いや、うん、すまなかった。普通でいいからな」
「なんだその同情に満ちた目は?」
可愛い服に相対する何かを見下したような神楽の表情だった。
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