望まぬ再会

11/25
384人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
再びカーテンを閉め、穂香に接近禁止令を出した神楽は、カーテンの中でゴソゴソと着替えを続ける。 そんな音が消えたと思った瞬間、勢いよくカーテンが開いた。 「ど、どうだ……」 女の子らしい薄い青のワンピース姿。本人も恥ずかしいのか、こっちに視線を向けないでいた。 「似合う!似合うよ!」 興奮しながら絶賛する穂香の横で、俺は立ち尽くしていた。 「き、貴様はどうなんだ?」 恥ずかしそうに俺を見た神楽に、止まっていた思考が動き出す。 「あ、ああ……似合うと思う……」 激しい気性と威圧感、綺麗に伸びた背筋のせいで大きく見える神楽だが、実際は女の子らしく身長は決して高くない。 むしろ穂香の方が大きいぐらいだ。 そんな神楽が身を縮めるようにしているものだから、見た目では可愛らしい女の子そのもの。 加えてひらひらの付いたワンピースだ。 今まで俺に恐怖を与える女帝でしかなかった神楽が、なんとも可愛く見えてしまう。 「歯切れの悪い返事だな」 「す、すまん」 俺の印象が悪いものではない事を確信した神楽は、いつものように憎まれ口を叩いてきた。 それに対し、俺も憎まれ口で対抗してしまう。 「せっかく可愛い服を着てるんだから、せめて笑顔ぐらい作れよ」 こんな服を着ながらも、神楽の表情はいつも通り凛としている。 「笑顔?……こうか?」 「……………………」 人間、意識して笑顔を作るのは難しいものだと知ってしまう。 「いや、うん、すまなかった。普通でいいからな」 「なんだその同情に満ちた目は?」 可愛い服に相対する何かを見下したような神楽の表情だった。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!