つきまとう影

40/41
前へ
/275ページ
次へ
最初は嫌々ながら引き受けたコーチだが、実際に教えてみるとそれなりに楽しさを感じてしまっていた。 神楽や沙那は別にして、他の3人が俺の指導で徐々に変わっていくのを見るのが、自分の事のように嬉しかったのだ。 常に危険と隣り合わせだが、それはもう諦めた。俺には安息の地など無いと思うしかない。 そんな事を思っているうちに、今日の練習が終わった。 その帰り道 「デレデレしすぎじゃない琢磨?」 「新しい犠牲者を作るつもりか貴様は?」 一緒に帰る穂香と神楽に攻められていた。 「酷い言い方だな……犠牲者の意味がわからんし、そもそもデレデレする余裕なんてあるかよ!」 俺的にはデレデレなどしていられない。俺の病気を知っている穂香や神楽は一定の距離を保ってくれるし、あの沙那ですらそこは気を使ってくれている。 だが、残りの3人については俺の病気について知らないのだ。知らないからこそ、普通の感覚で距離を縮めてくる。気を抜いている暇などありゃしない。 当然、デレデレする余裕も無いのである。 「そういえば……沙那はどうした?一緒に帰るって喚いていたよな?」 「縛ってきた」 「あ……そう……」 躊躇する事なく即答の神楽だ。無事誰かに見つけてもらえるように願いながら、余計な危険分子が居ない事に安心もしてしまう。 その頃、道場では…… 「はぁはぁ、お姉様……こんな目隠しなんて……身動き出来ず視界も奪われて、なんでしょうか?この抑揚感は?」 変態が1人悶えていた。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加