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俺がコーチを引き受けてから2週間。意外な事に1度も気を失うような事態になっていない。
やっぱり集中しなければいけない状況だと、病気の発作が出にくいのだろうか?それとも、女性に囲まれるこの環境が一切の油断を許さぬよう集中させているのか?
とにかく危険はついて回っているが、惨事にまではいたっていない。
そうなると俺にとって道場は、それなりに安らげる場所へとなっていたのだ。
「そりゃ結構な事だな琢磨……っと!」
「まあな……くっ!」
「で、どうだ?それなりにレベルアップに貢献しているのか?……よっと!」
「おっと!……それは3人に聞いてくれ!」
練習の休憩時間に俺と翔馬は組手をしながら話をしていた。
コーチを受けた日からほぼ毎日のように顔を出している翔馬。最初は冷やかしのようだったが、やはり昔の血が騒ぐのか、休憩になる度に俺と組手をしている。
部外者と組手をしている事に誰も口を挟まない。それどころか、休憩中にも関わらず、みんなで俺達の組手を見ているのだ。
それは神楽も沙那もだ。
足技に頼りっきりな神楽とトリッキーな動きに頼りっきりな沙那にとっても、俺と翔馬の正統派な組手は勉強になるらしい。
本人達はそんな事も考えず、日々のストレス発散と運動程度なのだが。
「お前もコーチやればいいだろ……はっ!」
「俺がか?人に教える柄じゃねえよ……くっ!」
「そうか?翔馬なら出来るだろ……っと!」
「出来る出来ないじゃなく、気持ちの問題だよ……よっと!」
次々と繰り出される拳や蹴りを目に焼き付けるように見ている3人。
神楽も沙那も真剣な表情で言葉を交わしながら見ている。
邪魔者は1名だけだった。
「ほらそこ!やっちゃえ翔馬くん!撃ち抜け股間を!」
「それじゃあ反則だよ有希ちゃん」
空気も読めず有希は騒いでいた。
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