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元から喧嘩にもならない争いをしていた2人だが、本気の争いじゃないぶん元に戻るのも早い。
「ねえねえ、このお店入ろうよ。ここ、可愛い服がいっぱいあるんだよ」
「いや、私は……そういうのは似合わないし……」
「そんな事無いから。絶対に似合うよ!」
何を確信して似合うと言い切っているのだろうか?興奮する穂香の鼻息は荒い。
「ほら、これなんかは可愛いよ」
そう言いながら、穂香が手にしたのはひらひらの付いたワンピース。
「これでは蹴りを放つ時に引っ掛かりそうだな」
「お前の服の基準はバトル服なのか?」
実際、俺が見た事のある神楽の服は、ジーンズやホットパンツなどでスカート姿は制服以外で見た事が無い。
「ほらほら、試着してみようよ」
「ち、ちょっと!?」
穂香らしくない強引さで神楽を試着室に連れ込む。
大人っぽく落ち着いた印象を学校では見せているが、子供の頃の穂香はこういう所があった。
自分の興味がある事に関しては、周りが見えなくなる。中学、高校と年を重ねるにつれ、そんな強引さは身を潜めていたが、やっぱり本質は変わっていない事に安心してしまった。
俺のように変わってほしく無いから。
昔を知っているからこそ、穂香にはそのままでいてほしい。それが、俺の日常だからだ。
ただし……俺の女性恐怖症だけは変わってほしいけど!
とにかく今は、俺しか知らない昔の穂香を神楽にも見せてくれるのが嬉しかった。
義理の姉と幼なじみ、どうせなら仲良くなってほしいからだ。
今はそれに対し、心配いらないだろう。
「どう、神楽ちゃん……きゃっ!」
「ほ、穂香ちゃん!?カーテン持ったまま転ばないでよ!」
「ご、ごめんなさーい!」
他の人にしたのならば、激怒ものの穂香の天然だが、それにも怒らない神楽も穂香を認めてくれているのだろう。
「貴様は何を見ている?」
「見えて無い!この角度からは見えん!」
「ちっ!中途半端なラッキースケベ属性が!」
「えっ?なぜ怒られる?」
神楽の怒りの矛先は、なぜかおれだった。
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