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帰宅後
ぎゅっと手を繋いで
お互いの指を絡めて。
玄関の扉を閉めてすぐに
彼を壁に押し付けた。
「…雅」
少し怯えながら目を上に向ける彼。
繋いだ手から彼の緊張が伝わってくる。
微かに震える瞼をゆっくり閉じて。
彼の柔らかな唇に自分のものを重ねた。
優しく、啄むような口づけを何度も。
色んな角度から彼の色んな表情が窺えて、嬉しそうに舌を絡める彼はとても色っぽい。
「俊さ…えろい」
長い間絡めあっていた舌を離すと、銀色の糸がお互いを繋いだ。
「…変態」
なんて言って俺の首に手を回す彼。
「今日は積極的だね。
でもあんまり可愛くならないで」
「べつに可愛くねぇし」
睨んで唇をつんと尖らせる彼も可愛いな。
「そういうのがダメなんだって…他のヤツに見られたくないから」
はぁ、とため息をついた彼の顔を見ようとすると目の前は壁。
不意に抱きしめられて、彼のはく息が俺の耳を擽る。
「俺にはお前だけだ」
抱きしめられる力が強くなっていく。
「浮気なんかしたら…」
「俊」
「…じゃあ俺のこと一生愛せるって証、もっと刻めよ」
そんな言葉が彼の口から聞けるなんて何年も付き合ってきたのに初めてで。
「俊が俺のこと大嫌いって言っても、別れるって言っても一生俊を愛すよ」
感じる温もりを俺は絶対に手放さない。
end.
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