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あれから顔を洗い、おろしたての服に着替えた。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね、俊!」
「おめでとう。こちらこそ今年もよろしくお願いします」
料理が得意だという彼に俺から、いかにも女の子が着ていそうなエプロンをプレゼントしてあげた。
レースは別に購入し、俺が付けてオリジナルで彼専用のエプロンを作り上げた。
不器用すぎ、なんて言って笑って受け取ってくれたのは嬉しかった。
だけど、最初は「恥ずかしいから」となかなか着てくれなかった。
お正月なんだから、去年とは違った彼が見たいとお願いすれば、少し照れながらもちゃんと着てくれた。
「堅苦しいなぁ。エプロン、すげー似合ってる」
きれいに卵焼きを作っている彼の腰に手をまわして。
「ちょ、離れろって。焦げる!」
「んー…離れたくない。
それに俊が作る料理は失敗してもうまいから!」
「失敗すんの、ヤダ」
「キスしたい」
「答えになってねぇ…ん…っ」
呆れ顔で振り向いた彼の顎をくいっと持ち上げて啄むような口づけを交わす。
否定しておいて、色っぽい声を漏らすのは反則。
「…っん…や、め…ろっ」
軽く突き飛ばされた。
「あぁっ」
「あっ」
キスに夢中になっていたら案の定、卵焼きは焦げていた。
「…焦げたじゃねぇかよ」
さっきまで甘いムードを醸し出していた彼が一瞬にして不機嫌になり、卵焼きを焼く専用のフライパンを俺の胸に押し付けてきた。
「大丈夫、食えるって。
あ、そだ!卵焼き食べさせてよ」
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