6/11
前へ
/21ページ
次へ
「…今日は早かったね。」 「………月曜だし…店空いてたから…」 俺は卒業と同時に、逃げるように実家に帰った。 「…そっちこそ、まだ起きてたのかよ。しかも、こんな時間からまた飲むの?」 「……DVD明日までに返さないといけないし。……………一緒に観る?」 「…………いいけど。」 実家に帰ってから、暫く家を出る気になれなかった。所謂、引きこもりってやつか。 見兼ねた両親が、とりあえず就職活動を再開するまでアルバイトでもしろと言った。 渋々働き始めた地元から少し離れたチェーン店の居酒屋。 幸い、地元の友達は殆ど県外で働いていたため、今のところこの惨めな姿を見られずに済んでいる。 「…………。」 「…………。」 居酒屋には色んな人間が来る。 酔っぱらって呂律が回っていないのに、それでも大したことのない自分論を部下に語る中年オヤジ。 その後、だいたい部下に介抱されてタクシーで家路。何が自分論だ。 恋人と別れて、女友達に慰めてもらいながらやけ酒をする二十代後半女性。 彼が居なければ生きていけないとか大袈裟に泣いて、どうせ新しい男が出来れば直ぐに忘れる。そもそも依存しすぎだ。 酒を飲みながら会社を辞めると愚痴ばかり溢す新入社員。 就職出来ただけましだ。どうせ辞めない。 「………あんたも飲む?ビール。」 「………いらない。」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加