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「…今日は早かったね。」
「………月曜だし…店空いてたから…」
俺は卒業と同時に、逃げるように実家に帰った。
「…そっちこそ、まだ起きてたのかよ。しかも、こんな時間からまた飲むの?」
「……DVD明日までに返さないといけないし。……………一緒に観る?」
「…………いいけど。」
実家に帰ってから、暫く家を出る気になれなかった。所謂、引きこもりってやつか。
見兼ねた両親が、とりあえず就職活動を再開するまでアルバイトでもしろと言った。
渋々働き始めた地元から少し離れたチェーン店の居酒屋。
幸い、地元の友達は殆ど県外で働いていたため、今のところこの惨めな姿を見られずに済んでいる。
「…………。」
「…………。」
居酒屋には色んな人間が来る。
酔っぱらって呂律が回っていないのに、それでも大したことのない自分論を部下に語る中年オヤジ。
その後、だいたい部下に介抱されてタクシーで家路。何が自分論だ。
恋人と別れて、女友達に慰めてもらいながらやけ酒をする二十代後半女性。
彼が居なければ生きていけないとか大袈裟に泣いて、どうせ新しい男が出来れば直ぐに忘れる。そもそも依存しすぎだ。
酒を飲みながら会社を辞めると愚痴ばかり溢す新入社員。
就職出来ただけましだ。どうせ辞めない。
「………あんたも飲む?ビール。」
「………いらない。」
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