2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺には姉が居る。
名前は愛子。
姉弟で“愛”と“誠”なんてふざけている。
偶然だけど。
何故偶然かと言うと、俺達は血が繋がっていない姉弟、再婚同士の連れ子だからだ。
俺が小学五年生の時に両親が離婚した。その二年後に再婚。子どもながらになんとなく離婚の原因を悟ってしまった要因だった。
母は俺を捨て、会っていたのは離婚後、数ヵ月間で数回だけだ。それからは新しい男が出来たのか、既に居たのか、段々会わなくなった。
「……この映画つまんね。」
「……そうだね。」
俺は新しい母親が好きではなかった。綺麗ではあったんだろうけど、化粧を塗りたくって“女”の匂いを漂わせていたのが不快だった。
「………美智子さん…風邪治った?」
「……大したことないよ。心配してるなら本人に聞けば良いのに。喜ぶと思うよ。」
一歳上の義姉はそんな美智子さんに似ず、昔から地味で喜怒哀楽が薄い女だ。きっと俺の知らない“父親”に似たのだろう。
姉は、家族ごっこをしようとする父と美智子さんにも上手い距離で付き合い、そして上手い具合で距離を置いていた。
俺はなんだかそれが仲間だと思えて、家庭の中で姉だけは密かに心を許していた。
最初のコメントを投稿しよう!